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2024/06/13 18:00
常にエッセンシャルな香りを作り出す「EMIESSENTIALS」
厳選した天然香料のみを用いて自然豊かな富士山麓で調香をされています。そんなこだわりのブランドとのコラボで誕生した、
MKLの夏の香り《EASY GOIN' VIVES》
その香りのために、かきおろされたストーリー「あの夏の香り」
短期連載第2回目です。
・・・・・・・
あの夏の香り〈2〉

「実は今日、私、最悪の気分なのよ」
梨花は目を閉じて誰にともなく話しかけてみた。
まるでルームスプレーのボトルが麻里の代わりに自分の話を
聞いていてくれているような気がした。
『何かあったの?』
そう麻里が言ったような気がするのは妄想だとわかっていたけれど、梨花は続けた。
「キャッチコピーの案を10個も出したけど、どれも採用されなかった」
梨花が答えると、麻里は言った。
『10個も案を出したの!? すごいのね、梨花ちゃん』
「いやいや、そのくらい、みんな出しているし。採用されなきゃ意味ないし」
思わず語気が荒くなった自分自身に驚いて梨花は目を開いた。
麻里が何か言葉をくれることを期待してスプレーのボトルを見つめてみたが、
聞こえてきたのは隣の部屋の住人がシャワーを浴びている音だけだった。
なんとはなしに、ルームスプレーを手に取ってシュッと一拭きしてみる。
吹き出したミストがハラハラと宙に舞いながら落ちていく。

なぜか急に、夏休みの記憶が蘇った。
あれは麻里が短大を卒業する前の最後の夏休みだった。
麻里と梨花は地元の駅で待ち合わせて、電車を乗り継いで、
2時間ほどかけて、江ノ島まで遊びに行った。
かっこいい男の子に海でナンパとかされちゃうかも?
半分冗談で、半分本気で、目一杯のおしゃれをして出かけたけれど、
特に男の子に声をかけられることはなかった。
でも、タコ煎餅を食べたり、ビキニで砂浜に寝転がったり、
テレビで見て気になっていた店に行ったり、
女子大生二人は一分一秒あますことなく夏休みの一日を楽しんだ。
二人とも終始、笑い転げていた。箸が転んでもおかしい年頃とはまさにこのことだ。
ところが、帰り道、冷房の効いた電車の中で、二人は打って変わって静かになってしまった。
麻里が何を考えていたかはわからない。
自分も何を考えていたか、梨花は思い出せない。
夏の夜の電車は冷房で冷えていて、
並んで座る麻里の腕の温かさが心地よかったことは覚えている。
アノ頃ノ 未来ニ 僕ラハ 立ッテ イルノカナァ?
確かそんな歌詞の歌をどこかで聞いた気がするけど、
私は、今、あの頃の未来に立っているのかな?
だとしたら、今の私は、あの頃に夢見ていた私なんだろうか?
「私、奥さんがいる人と、付き合っているの」
梨花は再び目を瞑って、声にしてみた。
夏休みを思い出す香りに包まれたら、気持ちがあの夏にトリップしたのかもしれない。
ここはあの日の電車の中で、隣には麻里がいてくれているような気がする。
あの夏の香り〈3〉に続く・・・
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Thank you
Photo(Main Visual)&Copyright by Satoko Fay
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