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2024/06/20 18:00

「私、奥さんがいる人と付き合っているの。」

夏休みを思い出す香りに包まれて、思いがけず口から漏れた梨花の一言。
夏の香り《EASY GOIN' VIVES》のために、かきおろされたストーリー「あの夏の香り」


短期連載最終回です。
あの頃の未来に、今の私は立っているのかな。。


・・・・・・・

あの夏の香り〈最終回〉


今日、私の気分が最悪なのは、その人に嘘をつかれたからなの。

本当は、今夜、一緒にご飯を食べる約束だったの。
けれど、彼が「後輩が仕事でピンチになったから手伝ってやらなきゃいけなくなった」って
言ってきたの。
もちろん、私は、そういうことならぜひって快くデートをキャンセルしたの。
でも、その後で、彼と一緒に働いているチームの人たちが話しているのを、
私、たまたま聞いてしまったの。
『真鍋は奥さんの具合が悪いから早退したよ』
『あー、そうなんだ? そりゃ、心配だな。確か、真鍋の奥さん、妊娠していたよね?』
 
私、彼の奥さんが妊娠しているなんて全然知らなかったの。
でも、思えば、彼は奥さんと別れるなんて一言も言ったことはなかったの。
私は自分に都合のいい言葉だけを集めて、一人、馬鹿みたいに夢を見ていただけだったの。
 
どれくらいの時間が経っただろうか、ケータイの着信音で起こされて、
梨花は自分が玄関で座ったまま寝ていたことに気がついた。
着信音は、今日の夜、会う予定だった男からであることがメロディーでわかる。
思いがけず心地よかった眠りから突然引き戻された梨花はぼんやりとその音をしばらく聞いていたが、
やがてため息とも深呼吸とも取れる大きな息を吐いて電話を取った。


 「もしもし? ごめん、寝てた?」
 ううん。
 「今日は、ごめんね。急に約束をキャンセルして」
 うん。
 「埋め合わせの日程を決めたいと思って電話したんだ。声を聞いて話したくて」
 うん。


受け答えをしながら、梨花はルームスプレーのボトルを見た。
夏休みの香りはもう消えてなくなってしまったように感じた。
もう一度、シュッと頭上に向かってミストを吹きかけてみる。
細かな香りの水滴が降りかかってくるのを感じながら目を閉じる。
 
麻里に会いたい。


既婚者を好きになったうえに付き合っているだなんて、
もし正直に言ったら夫がいる麻里は何と言うか、
考えると気が重くて、とても話すことができなかった。
一番話したいことを話せない、それがしんどくて、
麻里と距離を取っていたんだと、今、気づいた。
それだけじゃない。
好きな人と結婚して、迷うことなく仕事を辞め、
幸せそうに暮らしている麻里のことが私は羨ましかったし、憎らしかったんだ。


 「もしもし?」
 沈黙していた梨花に付き合うように黙っていた男が口を開いた。
 「大丈夫?」
 「うん、大丈夫」
 「埋め合わせの日なんだけど…」
 「もう、いいよ」
 「え?」
 「もう、会うの、やめる」
 「え?」

心の中で何度か言ったことがある言葉なのに、実際に口にすると涙が出てきた。
「どうしたの、急に? 何かあった?」
男の問いかけには答えず、梨花は電話を切った。
すぐにまた電話がかかってきたので、今度は電源を切った。
ケータイの電源を切るなんて、一体どれくらいぶりだろう?
そのまま玄関でひとしきり梨花は泣いた。
最初は声を出さず涙だけ。でも、ある瞬間に、涙は嗚咽に変わった。
それでも泣き続けていたら、今度は笑えてきた。
我ながら情緒が不安定すぎる、そう思うとおかしくて、さらに笑えた。
その間、夏休みの香りはずっと梨花を包んでいた。
私はきっと、大丈夫。
根拠はないけど、そう思える。
目を閉じると、どこからか波の音が聞こえてくる気がする。
寄せては返す潮騒の合間に、ケタケタと屈託なく笑う二人の少女の声がかすかに届く。
耳を澄ますと、遠く小さかった笑い声は、
少しずつ近く大きくなって、気づくと梨花の胸の奥で響いていた。
  「もしもし? 梨花ちゃん?」
 「麻里…」
そう言ったきり言葉にならなくなった梨花の泣き声を、
受話器の向こうの麻里はただ黙って聞いていた。


・・・・・・・
3回に渡る連載小説にお付き合いいただきありがとうございました。


香りは不思議です。

その人の持つマインドやストーリーはそれぞれなのに、

どこか深いところで想いを共有しているような感覚があります。

この物語も、香りとおなじ、私たちの深いところにあるあの夏の日を

思い起こさせてくれたように思います。

そして、立ち戻るところがあるから、私たちは先に進める。

そんな強ささえ思い出させてくれました。


物語の中に登場した香りは、MKLの夏の香り《EASY GOIN' VIVES》




初夏から、夏がまだ残る10月の終わりまでの期間限定発売です。

天然の香りにこだわった、富士山麓で調香・ボトリングをする、

EMIESSENTIALSとのコラボレーションの香りです。

夏の思い出と香りをシンクロさせて、あなたの人生をさらに豊かに。


この物語を寄稿くださったSatokoFayさんは南カリフォルニア在住。

ライター、サーファー、ヨガインストラクターであり、

インテグレイテッド・ヒーリングのプラクティショナーでもある多才な女性です。

ぜひ彼女のインスタグラムを覗きに行ってみてくださいね!

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Thank you

Photo(Main Visual)&Copyright by Satoko Fay


Instagram

https://www.instagram.com/satokofay/


webサイト

https://satokofay.com/


note

https://note.com/satokofay/

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